日本コーチング心理学学会について

日本コーチング心理学学会(Japan Society of Coaching Psychology) は、コーチングを科学的・学術的に探究し、その知を社会に還元する非営利の研究団体です。

私たちは、コーチングを単なる対話技術や成果支援の枠を超え、人間の成長・意味・関係性を中心に据えた「心理学的実践」として位置づけています。

本学会は、コーチング心理学とポジティブ心理学を基盤に、理論・実証・実践を統合するエビデンスベースのコーチング(Evidence-Based Coaching)を推進しています。


コーチング心理学とは

コーチング心理学とは?

Grant&Palmerの定義では,「コーチング心理学は既存の成人学習と子供の学習理論、および心理的研究法に基づくコーチングモデルを援用し、個人生活や職場での幸福(well-being)とパフォーマンスを高めるものである」とされております(Grant&Palmer, 2002)。

コーチング心理学とは、従来のコーチングに加えて、コミュニケーション技法や心理療法を応用した心理学。心理学的な理論を基盤に科学的な検証を行っている。

その基盤には、以下のような心理学の諸分野が含まれます。

  • 教育心理学
  • 社会心理学
  • 臨床心理学
  • 認知心理学
  • スポーツ心理学
  • 産業組織心理学
  • ポジティブ心理学

これらの知見を統合し、以下のテーマに対して科学的な支援を行います。

  • 目標達成とモチベーションの向上
  • ウェルビーイング(Well-being)と生活の質(QOL)の改善
  • エンゲージメントとレジリエンスの強化
  • 業務遂行力(パフォーマンス)の向上

また、コーチング心理学では次のような理論・技法が心理学的研究法に基づいて応用されています。

  • 行動コーチング
  • 認知行動コーチング
  • 解決志向コーチング
  • 動機づけ面接法
  • マインドフルネス
  • ナラティヴ・コーチング
  • NLP・EQ理論
  • ポジティブ心理学的介入

これらは経験的スキルではなく、心理学的理論に基づく検証可能な科学的モデルとして扱われます。

さらに、コーチング心理学はデータやエビデンスのみならず、クライアントの物語や意味づけを重視するナラティヴ・アプローチを取り入れています。

すなわち、「科学と人間性の統合」こそがコーチング心理学の本質です。


日本における「コーチング」の曖昧さ

日本では「コーチング」という言葉がビジネス、教育、自己啓発など多様な文脈で用いられています。
その結果、コーチングが「指導」「相談」「カウンセリング」などと混同され、本来の科学的・倫理的基盤が見えにくくなっています。

日本コーチング心理学学会は、この曖昧さを超え、コーチングを心理学に基づく学問的実践として再定義します。
私たちの扱うコーチング心理学は、

  • 心理学の理論に基づき、
  • 統計的・実証的手法で検証し、
  • クライアントの物語と意味を尊重する、
    「人間の成長を科学的に支える心理学の応用領域」です。

それは、人を変える技法ではなく、人が成長し、社会が成熟するための学術的挑戦でもあります。


日本文化への適合と独自性

本学会が重視するのは、海外で確立された理論の単純な導入ではなく、日本の文化的文脈に即した学術的翻訳です。
欧米の研究をそのまま適用するのではなく、日本社会の価値観・人間関係・組織文化に合わせて再構成する。

この「文化適応型エビデンスベースのコーチング」は、国内でも希少なアプローチであり、本学会の核心的特徴です。


学術活動と社会的使命

日本コーチング心理学学会は、学術研究・教育・資格認定を通じて、科学的根拠に基づくコーチングを日本社会に根づかせることを目的としています。

私たちが提供する認定制度は、商業的な資格ビジネスではなく、理論・実践・倫理を兼ね備えた専門職としてのコーチング心理学者の育成を意図しています。

海外の知見を日本文化の中で再検証し、科学的厳密さと文化的感受性を両立させる――。
そのプロセスこそが、私たちの学術的アイデンティティです。


社会への価値還元

私たちは、コーチングを通じて社会全体の心理的ウェルビーイングと倫理的成熟を促すことを目指しています。

  • 教育領域:主体的・内省的な学びを促すリフレクティブ・コーチングの推進
  • 組織領域:心理的安全性と自律性を支えるマネジメント・コーチングの研究
  • 社会領域:共感・希望・対話に基づく文化的ウェルビーイングへの貢献

日本コーチング心理学学会は、コーチングを「人間科学としての対話」として位置づけ、研究者・実践者・教育者が共に学び合う知のコミュニティとして、エビデンスと文化を結ぶ架け橋の役割を担っていきます。